【社長 Blog】『宝石のプロが伝える大事な話 – ダイヤモンドの情報開示 –』第46回:藤田嗣治とダイヤモンドー⑪
宝石のプロが伝える大事な話「 ダイヤモンドの情報開示 」
【 第46回 】
藤田嗣治とダイヤモンドー⑪
皆さまこんにちは。
福山・広島の宝石専門店「ヴァニラ」代表取締役社長
浜田 佳久(はまだ よしひさ)です。
私は、父が営んできた宝石屋に生まれ、
幼いころから美しいものや美術品、
そしておしゃれが好きな学生時代を過ごしました。
宝石の中では特に、ダイヤモンドと真珠が好きで
これまでの約四十年間のバイヤー経験を通して、
ものの価値や見る目を養って参りました。
今回このようなコラムを書かせていただくに至ったのは、
大きな変革期を迎えているダイヤモンド業界の中で、
正しい知識と情報を発信することが、
皆様の間違いのないダイヤモンドの買い方や
選び方につながると考えるからです。
ながきにわたり、
「藤田画伯とダイヤモンドのかかわり」
について書いてきましたが、
今回ようやくその奇策の核心を
お伝えします。
萩須氏にパリ行きを先に許した無念の中、
1949(昭和24)年2月、やっと彼にも米国、
そしてビザがおりました。
当時藤田は各新聞社や
業界大手の雑誌社・通信社などの
取材要請から逃げ回っていたようですが、
やっとのことパンアメリカン機で
出国することになり、
羽田空港の待合室で
画家仲間に見送られるなか、
命よりも大切な「絵の具の入った木箱」
をしっかりと握りしめていました。
そうです。
その木箱の中身こそがとんでもない
ダイヤモンドの奇策であったのです。
ここまでで「大量の絵の具のチューブの中に
ぎっしりとダイヤモンドが詰め込まれて」
いたと想像がつきましたでしょうか?
これこそが藤田の藤田たらしめる奇策でした。
第44回の本稿で3〜5年は暮らせる量と
記しましたが、精査の結果5〜10年くらいは
暮らせるだけのダイヤをチューブに
詰めていたようです。
まだダイヤなどの自由化が
なされていない時代であり、
通関で見つかればとんでもない
ことになっていたとも思われる時代に、
藤田はこの奇策に打って出たのです。
インフレ時に紙幣が役に立たないことと、
日本から持ち出せる現金が
あまりに少ないことを知っていた彼は、
米国やパリで5〜10年暮らせるだけのダイヤを、
戦前戦後の日本でこつこつと集めていたのです。
戦後のパリ生活で国際感覚を学んでいた藤田は、
将来何が自分の身を守ってくれるのかを見極め
「小さく、軽く、換金性に優れる」
三拍子揃ったダイヤモンドを命綱と
見定めていました。
そして絵具箱を携えた彼は
意気揚々として通関を通り、
米国へと出国して行ったのです。
私はこの奇策を知り「なるほどな〜」
と唸るのみでした。
これこそが画家である彼にしか
案出し得なかった、藤田マジックだったのです。
結末をながきにわたり
先延ばしにしたことをお詫び申し上げます。
株式会社ハマダ宝石時計店
ジュエリーショップ・VANillA(ヴァニラ)
代表取締役社長 浜田 佳久
1949年生まれ。福山市、広島市に店舗を構え、今年で創業72周年を迎える宝石専門店の代表。
約40年もの間、ダイヤモンド、色石、真珠など、数々の宝石のバイヤーとして多くの目利き
をしてきた経験と審美眼を持つ。
【 メディア情報 】
◆ 今回のコラムは、2022年11月1日に発行された
広島圏の情報誌
「 経済リポート・1787号 」に掲載されました。
◆ RCCテレビ「 イマなまっ!」にて、
ヴァニラが出演・紹介されました♪
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